「デスクワークへの期待権」を認めた東京高裁判決 ― 配転命令にも限界がある

温かな光を背景に、腕組をして微笑む白石社会保険労務士

【NEWS】梱包・倉庫業などを営む東京都内の企業で働く労働者が、現業職への配置転換命令などは違法と訴えた裁判で、東京高等裁判所は配転命令に際して労働者にはデスクワークへの期待権があったとして、配転を無効とした一審判決を維持した。同社は担当業務がなくなった場合、デスクワークを提示すると明言していたと指摘。配転は権利濫用に当たるとした。配転命令に違反したことを理由とする昇給停止処分、懲戒解雇も無効と判断している。違法な配転命令などは不法行為にも当たるとして、慰謝料50万円の支払いも命じている。(ニュース提供元:株式会社労働新聞社)


社労士の視点

企業には配置転換を行う人事権があります。しかし、その権限は無制限ではありません。
今回の判決で注目されたのは、会社が「担当業務がなくなってもデスクワークを提示する」と従業員に説明していた点です。裁判所は、この会社の説明によって労働者にはデスクワークを継続できるという「期待権」が生じていたと判断しました。その期待を十分な理由なく覆して現業職へ配置転換したことは、配転権の濫用に当たるとされたのです。

さらに、その無効な配転命令に従わなかったことを理由とする昇給停止や懲戒解雇も無効となりました。

実務上のポイント

今回の判決は、就業規則に配転条項があるというだけでは足りず、会社が従業員にどのような説明を行い、どのような運用を続けてきたかも重要な判断要素になることを示しています。採用時の説明、面接時の約束、人事制度の運用などが、後に「従業員の合理的な期待」と評価される可能性があります。

人事異動は企業経営に欠かせないものですが、配置転換の必要性や合理性を丁寧に説明し、従業員との信頼関係を損なわない運用がこれまで以上に重要になるでしょう。

社労士としても、この判決は「会社の説明や日頃の運用が法的責任につながること」を改めて考えさせられる事例だと感じます。

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