「採用したものの、思っていたほど仕事ができない」
「自分から動かず、指示を待ってばかりいる」
「何度伝えても、なかなか改善しない」
経営者から、このような話を聞くことがあります。
確かに、従業員本人に仕事への姿勢や能力、協調性の問題がある場合もあります。
雇用されている以上、従業員にも、与えられた役割を果たし、改善に努める責任があります。
しかし、「期待した人材ではなかった」と結論づける前に、経営者側も振り返る必要があります。
採用時に、どのような能力や経験を確認したでしょうか。
任せる仕事や求める水準を、具体的に説明していたでしょうか。
入社後に必要な教育や指導を行っていたでしょうか。
経営者の頭の中にある期待は、言葉にして伝えなければ従業員には分かりません。
「経験者だから分かるだろう」
「普通はこれくらいできるはずだ」
「いちいち言わなくても、自分で考えてほしい」
そう思っていても、会社によって仕事の進め方や判断基準は異なります。
十分な説明をしないまま仕事を任せ、期待どおりの結果が出なかったときに、従業員だけを責めることはできません。
また、本人の能力や適性と、任せている仕事が合っていない場合もあります。
配置や役割を見直すことで、力を発揮できる人もいます。反対に、適性に合わない仕事を任せ続けながら、「能力がない」「使えない」と評価してしまえば、本人の意欲も失われていきます。
採用、配置、教育、評価、面談、業務指示。
これらは、すべて経営者や管理職の大切な仕事です。
従業員の問題を指摘するのであれば、会社としても、
何を期待しているのかを伝えたか。
どこを改善してほしいのかを具体的に説明したか。
必要な指導や教育を行ったか。
本人の話を聞く機会を設けたか。
改善するための時間と機会を与えたか。
こうした点を確認する必要があります。
「もっとしっかりしてほしい」
「やる気が感じられない」
「期待していたのに残念だ」
このような抽象的な言葉だけでは、従業員は何を直せばよいのか分かりません。
どの行動に問題があり、今後どのようにしてほしいのか。事実に基づいて具体的に伝え、改善の経過を確認することが、適切な労務管理につながります。
従業員に責任があることと、経営者に責任があることは、どちらか一方ではありません。
従業員には、仕事に誠実に取り組む責任があります。
経営者には、その人を採用し、適切な仕事を任せ、育成し、公正に評価する責任があります。
「期待した人材ではなかった」と感じたときこそ、経営者自身も問われます。
本当に本人だけの問題だったのか。
期待する役割を明確に伝えていたのか。
育てるために必要なことをしてきたのか。
従業員の成長を求めるのであれば、会社もまた、人を採用し、育てる姿勢を見直していかなければならないのだと思います。
