政府の会議で、1年単位の変形労働時間制について議論が行われました。
中小企業団体からは、取引先の都合による急な繁忙に対応するため、30日前までに勤務カレンダーを設定しなければならない現行制度の運用改善を求める声が出ています。
この意見には、現場の実感として理解できる部分があります。
中小企業では、人員に余裕がないなかで、急な受注や納期変更、取引先からの要請に対応しなければならない場面が少なくありません。制度どおりにきれいに勤務カレンダーを組むことが難しいという声は、決して軽く見るべきではないと思います。
しかし一方で、労働時間制度は、企業が人を柔軟に動かすためだけの仕組みではありません。
働く人にとって、勤務日や休日があらかじめ分かることは、生活の土台です。育児、介護、通院、家族との時間、地域活動、そして何より休養のためにも、「いつ働き、いつ休めるのか」が見通せることはとても重要です。
そのため、30日前ルールを単純に緩和することには慎重であるべきです。
もし勤務カレンダーの変更が簡単に認められるようになれば、休日や勤務時間が直前に変わることが常態化し、結果として長時間労働や生活の不安定化につながるおそれがあります。
必要なのは、労働時間規制を後退させることではなく、予測できない繁忙にどう例外的に対応するかという視点です。
たとえば、変更できる理由を取引先都合や天候、災害、突発的受注などに限定すること。変更できる回数や日数に上限を設けること。労使協議を必須にすること。育児・介護・治療中の労働者には特別な配慮を行うこと。休日が変更される場合には、代替休日を明確にすること。こうした条件があって初めて、現場に即した運用改善と言えるのではないでしょうか。
「柔軟な働き方」という言葉は、とても聞こえのよい言葉です。
しかし、その柔軟さが企業にとってだけ都合のよいものになってしまえば、働く人の生活は不安定になります。企業の事業継続や取引上の事情に配慮することは必要です。しかし同時に、働く人の健康、生活時間、予定の立てやすさを守ることも、同じくらい大切です。
今回の議論では、中小企業の実態を踏まえた制度運用の改善は必要だと思います。
ただし、それは単なる規制緩和ではなく、労使双方が納得できるルールづくりでなければなりません。
「柔軟な働き方」は、会社のためだけではなく、働く人の生活を守るためのものである。
この視点を忘れずに、今後の議論を見ていく必要があると感じます。
