1人採るより、1人辞めない職場をつくる~保育士不足・介護士不足の本質~

温かな光を背景に、腕組をして微笑む白石社会保険労務士

1. 「人手不足」という言葉への違和感

「保育士が足りない」

「介護士が集まらない」

こうした声を聞くことが増えています。確かに現場は厳しい状況です。求人を出しても応募がない。
採用できても長続きしない。職員が辞めるたびに残った人の負担が増え、さらに退職者が出る。

しかし私は、この問題を単純な「人手不足」として捉えることに少し違和感があります。
本当に足りないのは「人」なのでしょうか

2. 資格を持ちながら現場を離れている人がいる

保育士も介護福祉士も、資格を持つ人がまったくいないわけではありません。

実際には、資格を取得しながら現場を離れている、いわゆる「潜在保育士」「潜在介護福祉士」が数多く存在します。つまり、考えるべきことは「どう採用するか」だけではありません。
むしろ大切なのは、

「なぜ辞めたのか」

「なぜ戻りたいと思えないのか」

ではないでしょうか。

3. 退職理由は給与だけではない

もちろん賃金の問題は重要です。保育士も介護士も、命や暮らしを支える責任の重い仕事です。
その専門性や責任に見合った処遇改善は、今後も必要です。

しかし、退職の理由は給与だけではありません。

現場では、

「上司に相談できなかった」

「人間関係に疲れた」

「忙しすぎて心が折れた」

「頑張っても認めてもらえなかった」

「休みたくても休めなかった」

といった声も少なくありません。

給与が多少上がったとしても、毎日つらい思いをする職場に人は残りません。
逆に、決して高給ではなくても、人間関係が良く、自分の仕事が尊重されていると感じられる職場には、
人が定着します。

4. 一人が辞めることで失われるもの

一人の職員が辞めるということは、単に人員が一人減るということではありません。

そこには多くのものが失われます。

利用者との信頼関係。

子どもたちや保護者との関係。

ベテラン職員が持っていた経験や知識。

若手を育てる力。

職場の安心感。

これらは、新しい職員を採用すればすぐに取り戻せるものではありません。
だからこそ、人材確保対策は「採用」だけに目を向けるべきではないのです。

5. 本当に必要なのは「定着」の視点

人材不足対策というと、どうしても採用に目が向きがちです。
しかし本当に大切なのは、今いる職員が働き続けたいと思える職場をつくることです。

そのためには、

  • 管理職のマネジメント力を高めること
  • ハラスメントを防ぐこと
  • 職員が安心して相談できる環境をつくること
  • 記録や事務作業の負担を減らすこと
  • 休暇を取りやすくすること
  • 子育てや介護と仕事を両立できる勤務体制を整えること

こうした取り組みが必要です。

一つひとつは地味かもしれません。

しかし、職員が「この職場で働き続けたい」と思える環境づくりこそが、最も確実な人材確保策ではないでしょうか。

6. 人材不足は組織の問題でもある

私は、保育士不足や介護士不足の問題は、採用の問題である前に組織の問題だと思っています。
人が辞める理由を分析しないまま採用だけを繰り返しても、根本的な解決にはなりません。

どれだけ新しい人を迎えても、人が流出し続ければ不足は解消しません。
大切なのは、辞めた人の声や、今いる職員の声にきちんと向き合うことです。

7. 「どう集めるか」から「どう続けてもらうか」へ

保育士も介護士も、子どもや高齢者の暮らしを支える専門職です。
その専門職が安心して働き続けられる環境をつくることは、事業者だけでなく、
行政や社会全体に求められている課題です。

人手不足対策の第一歩は、採用だけではありません。

「どう集めるか」ではなく、

「どうすれば辞めたくならない職場をつくれるか」

その視点から、保育士不足・介護士不足の問題を考え直す必要があるのではないでしょうか。

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