厚生労働省は、「年収の壁」への対応について改めて周知を行っています。
いわゆる「106万円の壁」は、一定規模以上の企業で働く短時間労働者が、週20時間以上勤務し、賃金要件などを満たすことで、健康保険・厚生年金保険の被保険者となる問題です。厚労省は、106万円の壁について、被用者保険の適用拡大として位置づけています。なお、年収約106万円に関係する賃金要件は、令和7年の年金制度改正法により、最低賃金の状況を踏まえ、令和7年6月から3年以内に撤廃されることとされています。
一方、「130万円の壁」は、配偶者などの健康保険の被扶養者でいられるかどうかに関わるものです。繁忙期の残業などで一時的に収入が増えた場合には、事業主の証明により、引き続き被扶養者として認定される仕組みがあります。
また、令和8年4月1日以降は、給与収入のみの場合、労働条件通知書などに記載された労働契約内容から見込まれる年間収入が基準額未満であることが明らかであれば、原則として被扶養者として取り扱う考え方も示されています。
企業にとって重要なのは、「扶養の範囲で働きたい」という従業員の希望を単に受け止めるだけでなく、制度変更を正しく説明し、本人が納得して働き方を選べる環境を整えることです。
社会保険に加入すると、保険料負担により手取りが一時的に減ることがあります。その一方で、将来の年金額の増加や、傷病手当金・出産手当金など、被用者保険ならではの保障もあります。目先の手取りだけでなく、長い目で見た安心も含めて説明することが大切です。
また、事業主にはキャリアアップ助成金などの活用も考えられます。短時間労働者を新たに社会保険に適用させ、収入増加の取組を行う場合には、助成金の対象となる可能性があります。
「年収の壁」は、従業員だけの問題ではありません。人手不足が続く中で、企業が人材をどう活かし、どう処遇していくかという労務管理上の課題でもあります。
これからは、「扶養内に収めるために働く時間を減らす」のではなく、「安心して働く時間を増やせる職場づくり」が求められます。制度は複雑ですが、会社が丁寧に説明し、労働条件通知書や雇用契約書を整備し、必要に応じて助成金も活用することで、従業員にとっても企業にとっても前向きな対応につなげることができます。
【NEWS】厚労省は4月14日「年収の壁」対応を広報。106万円の壁は被用者保険の適用拡大。130万円は被扶養者認定の事業主証明、労働契約内容の年間収入で判断、特定扶養親族の認定基準見直し、キャリアアップ助成金で。〈ニュース提供元:㈱社会保険研究所〉
