社労士の目で見る新年度の制度改正
4月1日は、単なる年度替わりではありません。
人事・労務・社会保険の実務に携わる立場から見ると、
今年もまた、現場に影響する制度の見直しがいくつも動き出す節目です。
2026年4月1日からの変化を見ていると、今年のキーワードは
「見える化」「働き続けられる仕組み」「実務対応の再点検」
だと感じます。
まず、企業実務の面で見逃せないのが、改正女性活躍推進法です。
2026年4月1日から、常時雇用する労働者101人以上300人以下の事業主にも、
男女間賃金差異や女性管理職比率などの公表義務が広がります。
これまで一部の企業に求められていた「情報公表」が、中堅企業にも本格的に求められることになりました。
これは単なる開示義務の追加ではありません。採用、配置、昇進、雇用区分、賃金制度のあり方が、
外から見える時代に入ったということです。
人事制度に“説明できる整合性”があるかどうかが、これまで以上に問われます。
次に、高齢者雇用や年金相談の現場で大きいのが、在職老齢年金制度の見直しです。
日本年金機構によると、2026年4月から、年金が減額される基準額は月51万円から65万円へ引き上げられました。
つまり、年金を受け取りながら働く人が、これまでより収入を得やすくなる方向です。
実務上は、定年後再雇用者やシニア人材の働き方設計、賃金設計、本人への説明にも影響します。
「働くと年金が減るから抑える」という発想から、「どう働けば無理なく続けられるか」を考える局面へ移ってきたと言えるでしょう。
さらに、給与計算や社会保険実務では、現物給与価額の改正も押さえておく必要があります。
日本年金機構は、食事による現物給与の価額を2026年4月1日から、
住宅による現物給与の価額と算出方法を2026年10月1日から改正すると案内しています。
現物給与は、標準報酬月額の算定にも関わるため、寮、社宅、食事支給のある事業所では見落とせません。
「通勤費や基本給」だけを見ていればよい時代ではなく、給与の支給実態全体を丁寧に確認する必要があります。
一方で、4月1日から動くのは、企業実務だけではありません。
厚生労働省が公表している令和8年4月の主な制度変更を見ると、RSウイルス感染症に対する母子免疫ワクチンの定期接種化や、各種手当の改定など、暮らしに関わる制度も動いています。
制度改正というと、つい企業や行政の手続き面に目が向きがちですが、本来それは、働く人や家族の生活を支えるためのものです。
社労士として制度を見るときも、条文や手続だけでなく、その先にいる人の生活を見る視点を忘れてはならないと思います。
2026年4月1日からの変化を一言でいえば、
「制度を整えるだけでなく、実態を問う時代に入った」
ということではないでしょうか。
公表義務が広がる。
働き方の前提が変わる。
給与実務の細部まで見直しが必要になる。
つまり、形式的に対応するだけでは足りず、日頃の運用そのものが問われる時代です。
社労士の役割も、単に制度改正を伝えることにとどまりません。
何が変わるのかを整理し、現場にどんな影響があるのかを読み解き、企業や働く人が無理なく対応できるよう橋渡しすること。
2026年4月1日は、その役割の大切さをあらためて感じる節目でもあります。

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