【第3回】議員から職員へのハラスメントが行政を弱らせる理由

温かな光を背景に、腕組をして微笑む白石社会保険労務士

これまで、「なぜ今議会ハラスメントが問題なのか」「厳しい質疑との境界線はどこにあるのか」を考えてきました。今回は、その影響について掘り下げます。

議員から職員への威圧的な言動は、単に当事者間の問題にとどまりません。実は、行政機能そのものに影響を及ぼします。

議員は質問権を持ち、行政を監視する立場にあります。一方で職員は、答弁義務を負い、資料作成や説明にあたります。この関係は制度上当然のものですが、そこに威圧や人格攻撃が加わると、構造は一変します。

職員が萎縮すると何が起きるでしょうか。

まず、本音の説明が難しくなります。リスクや課題を率直に伝えるよりも、無難な答弁を選ぶようになります。挑戦的な政策提案は控えられ、前例踏襲型の行政が強まる可能性があります。

また、「目をつけられたくない」という心理が働けば、問題を早期に共有する文化が弱まります。これは結果として、行政の透明性や迅速性を損なうことにつながります。

本来、議会の役割は行政を萎縮させることではなく、説明責任を果たさせ、より良い政策へと導くことです。しかし、威圧が常態化すれば、説明は形式化し、議論は形骸化してしまいます。

職場におけるパワーハラスメントを規律する労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律では、「就業環境を害する言動」が問題とされます。議会は一般企業とは異なる場ではありますが、職員が安心して業務にあたれる環境が必要である点は共通しています。

行政はチームで動く組織です。一人の萎縮は、やがて組織全体の空気を変えます。声を上げにくい空気、挑戦を避ける空気が広がれば、最終的に不利益を受けるのは市民です。

議会と行政は対立関係にあるのではなく、役割の異なるパートナーです。緊張関係は必要ですが、恐怖関係であってはなりません。

強い議会とは、職員を沈黙させる議会ではなく、率直な説明を引き出せる議会ではないでしょうか。

次回は、では具体的にどのような対策が考えられるのか、「ルール」と「文化」という視点から整理してみたいと思います。

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